子どもの食事づくりのかなめ、「出汁(だし)」。
忙しいからと顆粒のものを使用していませんか?
言葉で書く「だし」は同じですが、素材から自分で取った「出汁」と、顆粒を溶かしただけの「出汁」では、含まれる栄養素が異なりますし、子どもの味覚への影響も異なります。
子育て期は、子どものお世話に手間と時間がかかるため、料理も優先順位をつけてやる必要がありますが、その中でもやり続けるべきは「出汁をとる」です。
子育て中で忙しい時期は、できるだけ簡単で継続できる方法を選び、実践していきましょう。おすすめは、出汁の材料を「水に浸けておく」だけで取る方法です。出汁の材料を一晩水に浸けておくだけでおいしい出汁が取れます。「出汁パック」を利用する際も同じ。出汁パックを一晩水に浸けておきます。
***********
※出汁パックを使う際は「原材料」を確認しましょう。素材以外のものが入っている商品は、幼児期には向きません。また、濃く出過ぎる傾向もありますので注意が必要です。出汁は、濃ければ濃いほど良いのではありません。
**********
だしの材料(昆布とかつお節または煮干し。出汁パック)を一晩水に浸けた後、だしの材料はを取り除きます。その後、汁物の具材(主に野菜)を加えて火にかけます。昆布・かつお節・煮干し・出汁パックなどは加熱しません。
取った出汁(加熱しない状態)は、密閉容器に入れて冷蔵庫保管すれば2~3日もちますが、時間の経過とともに風味が落ちます。簡単な方法で毎日出汁を取る習慣を軸にし、余らせてしまった時は2日で使い切るようにするスタンスがおすすめです。
また、おいしい出汁を取るためには、使用する素材の「鮮度」が大切です。
みそ汁の出汁におすすめの「煮干し」と「干し椎茸」を使用する際には、注意する点があります。
手軽にコクのある出汁を取れる「煮干し出汁」は、毎日のおみそ汁におすすめです。煮干しを使用する際は、『黒いハラワタと頭部にあるエラを取り除き、頭からはおいしい出汁が出るので、捨てないで使用するとよい』とされています。
煮干しは「酸化」が大敵です。購入する際は、きれいな銀色でつやがあるものを選ぶのがポイントです。封を切ったら保存容器に移し、紫外線の当たらない冷暗所に保管し、早めに使い切りましょう。すぐに使わない場合は、冷凍しておけば約半年間保存可能です。
干し椎茸を使用する際は、水に浸けて戻します。お湯に直接入れると苦味が出ておいしい出汁が取れないので注意が必要です。夕食に使う場合は、朝食の片づけのついでに、保存容器などに「水と干ししいたけ」を入れておくと美味し出汁がすぐに使えます。
ーーーーーーーーーーーーーーー
子どもがいる家庭はぜひこの方法で
≪基本の出汁の取り方≫
ーーーーーーーーーーーーーーー
【材料】
①浄水
大人1人あたり…165g
3歳以下の子どもの目安量…120g
※大人1人あたりの出来上がり量は、150g
(みそ汁やお吸い物には、大人1人当たり150g(150cc)の出汁を用意します。)
②昆布
水分量に対して1%重量
(例/大人4人_660gの浄水に対して、約6gの昆布)
②かつお節または煮干し
水分量に対して0.5%の重量
(例/大人6人_660gの浄水に対して、約3gの削りかつお)
【材料についての補足説明】
一般的なレシピ本や調理の本には、『水分に対して、昆布2%・かつお節(削りかつお)1%』の配合が紹介されています。この配合にするととても美味しい出汁がとれます。
しかし、子どもの味覚を育てる視点から見ると、2歳以下の「味覚の黄金期」は薄味にしたい時期。出汁も薄めにします。好き嫌いのピーク4~5歳は食べ物の味に対して敏感ですので、薄いお出汁でも十分感じ取れて美味しく食べられます。
そこで、10歳未満のお子さんがいる家庭では、わざわざ濃い出汁にすることを控え、通常の半量の素材で出汁を取り食べ慣れていく練習をしましょう。大人も味覚が敏感になり、素材の美味しさを改めて感じ取ることができるようになります。もちろん、10歳以上になっても薄いお出汁で満足できることは喜ばしいことです。わざわざ濃く取る必要はありません。
ーーーーーーーーーーーーーーー
【調理手順】
先に、「水出し」の方法を述べました。
ここでは、加熱しながら取る一般的な手順を示します。
冷蔵庫に出汁を作り置きしておくのを忘れた!
という時にはこの方法で。
また、水出汁ばかりではなく、時には下記の方法で出汁を取ると、味覚も刺激されます。
<A>昆布とかつおのお出汁
①昆布は30分以上浄水に浸しておく。
②弱火~中火にかけ、温める。沸騰する前に昆布を取りだす。
③昆布を取りだした後、かつお節を入れる。沸騰したらすぐに火を切り、茶こしなどを利用してかつお節を取り除く。
<B>昆布と煮干しのお出汁
①昆布と煮干しを水に浸け、30分以上おく。
煮干しは、基本的なやりかたは上記通りはらわたを取り除きますが、鮮度の良い物や奇麗な煮干し取り除かなくてもOK。まるのまま使う。
②弱火~中火にかけ、温める。
沸騰直前で昆布と煮干しを取りだす。
ーーーーーーーーーーーーーーー
日々の食事作りで心掛けること
≪出汁編≫
ーーーーーーーーーーーーーーー
驚くほど、出汁を取らない家庭が増えました。
出汁を取らず、顆粒の「だしのもと」や「中華風顆粒だし」などを利用しているのだと思います。
インスタントな出汁の素ではなく、素材から自分でつくった「だし汁」は、子どもの味覚だけでなく、大人の味覚も守る大切な役目を果たします。
少食や偏食のお悩み相談の中で、私が一番に確認することは「美味しいお出汁を取れているか」です。
子どもの少食や偏食に悩んでいる人の中には、「出汁入りみそ」や「液体みそ」を使っており、それらを使えば美味しくなるだろうと思い込んでいる方もいらっしゃいました。
出汁が要らないからと、手を抜いているつもり。ところが、その選択が逆に何倍も手間をかけざるを得ない元凶になっていることに気付いていません。
確かに、各メーカーさんの努力の結晶でもありますので、利用シーンをよく考えれば宝になります。しかし、「味覚を育てる食育」という視点においては利用をやめていただきたいと思います。
美味しい飯と、美味しい汁物があれば、1食あたりの「満足度」が上がりますので、離乳食が終わったからと出汁を取るのをやめるのではなく、「忙しいからこそ美味しさの軸になる「出汁」をとり続ける」という食習慣を定着させませんか。
出汁に使う材料は、上記の比率で準備することをおすすめしますが、材料の状態によっては、もっと使用量を減らすこともできます。
昆布は、奇麗に形が整えられた商品ではなく、「みみ」と呼ばれる昆布の切れ端(切り落とし部分)でも美味しいお出汁が取れます。そして、形を整えて売られている物より格段にリーズナブル!私はこの「みみ」を常備しています。築地へ塾生さんたちをご案内する際には「寿屋」さんに寄り、かならず「真昆布のきれはし」を購入して帰ります。この商品は、とても旨味がよく出るので、使用量は上記で示した1%ではなく、0.5%に下げても十分!すごいぞ昆布!です。
出汁パックについては先に「濃く取れる傾向がある」と書きました。
パッケージに書いてある「作り方」は参考程度にして、上記の方法とった「昆布とかつお節の出汁」と比較してみましょう。
塩分の感じ方や旨味の感じ方を比較してみてください。
商品によって様々ですので、具体的に「○g水を増やしましょう」と明示はできませんが、塩味、濃すぎないかな?旨味と風味、強すぎないかな?と確認→
上記と同じくらいの感じにするには、どのくらい水の量を増やしたらいいかな?と調整していきます。
濃すぎるリスクをヘッジし、加えるお野菜などの素材の味を生かすお料理に仕上げることができます。
ひとことに昆布と言っても、種類や熟成の状態によって出る旨味や風味が異なります。とても奥深い素材です。
数字は、他人とのコミュニケーションの際の共通言語としてとても助かるツールですが、数字の通りにやればいいという訳でもありません。
何事においても、数字の背景にある「伝える人の意図」がありますので、どのようなつもりで数字で表したのがを考察することも必要かもしれませんね。
数字を参考にしつつ、
自分で実験して、その後、腑に落ちるまたは「好き!」と感じられる数字に自分で修正していくこと。そして、それを感覚でできるように軸にしたいことは繰り返しやる。こうして「毎日のこと」の精度が上がっていきます。
「お母さんの料理は、いつも少し違うけど、いつも美味しい♪」はこうして出来上がります。
ーーーーーーーーーーーーーーー
食育革命®小寺美江(栄養士)
☆プロフィール