【栄養学コラム】女性の更年期によくおこる「うつ症状」に対して、大豆イソフラボンは本当に効くのでしょか?

女性の更年期によくおこる「うつ症状」。
大豆イソフラボンは本当に効くのでょうか?

女性の体を整えてくれている 女性ホルモンが急激に減少していく「更年期」。40歳半ばに差し掛かると、この「心身がゆらぐ時期」を上手に乗り切る知恵は
有効に活用していきたいですよね。

 

「閉経後の女性が直面する最も重要な健康問題の1つ」として「うつ病」が取り上げられており、うつ病は女性の方が男性と比較して2倍のリスクがあるということが分かっています。

 

「更年期のうつ症状を予防する食事」で調べると、必ずと言ってよいくらい目にするのが「イソフラボン」。イソフラボンは女性ホルモンである「エストロゲン」に構造が似ていることから、更年期に減少するエストロゲンを補えるという考えのもと、大豆イソフラボンを含む食品を積極的に食べることを推奨している情報をよく見かけます。

 

しかし、アメリカと日本ではイソフラボンの摂取状況に10倍の開きがあることが分かっており、「食事でどのくらい摂ればいいの?」「日本人もサプリメントで摂る必要があるの?」「そもそも、本当に効くの?」など、疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

私も同じように感じたことから「女性のうつ と イソフラボン摂取の関連」が研究された論文を調べてみたところ、2016年に出されたレビュー論文がありましたのでその内容を紹介したいと思います。

(レビュー論文とは、同じテーマで研究された複数の原著論文をまとめた「総説」を指します。)

世界的にうつ病の増加が懸念されており、WHO(世界保健機構)によると3億5,000万人の人々がうつ病に苦しんでいると報告されています。うつ病は寿命全体に影響を与える主要な健康問題であり2020年には2番目に重要な「健康障害の課題」になると予測されています。

 

うつ症状を軽減するアプローチの1つとして、食生活との関連が先行研究で明らかになっており、カフェインや、魚の摂取量との相関が調べられています。そして近年「大豆食品に含まれるイソフラボン」に「抗うつ作用」があることが注目されたことにより、疫学研究で「うつ症状とイソフラボン摂取の関係」が研究されるようになりましたが、

まだあまり無い状態であったため、このレビュー論文では大豆イソフラボンの摂取がうつ病に及ぼす影響が再検討されました。

【研究方法】
システマティック・レビュー

【調査方法】
疫学研究・臨床試験の2パターンの研究を対象にレビューを行った。

疫学研究とは、
地域社会や特定の人間集団を対象として、健康に関する事象(病気の発生状況など)の頻度や分布を調査し、その要因を明らかにする医学研究のこと。
(※1)

臨床試験とは
「人の集団」のなかでも「患者」を対象とした調査のこと。
(よりよい治療法を確立することを目的として、患者さんに協力していただき、新しく法案された治療法、新しい薬や薬の新しい使い方が病気に対して有効かどうか、また安全かどうかについて調べる試験のこと。(※1)

【結果】

~疫学研究~
日本、中国人、香港人、台湾で行われた5つの研究より、イソフラボンを含む大豆食品の摂取により 抗うつ効果が得られることが示唆されました。

~臨床試験~
20件の臨床研究より、半数以上において「抗うつ効果がある」と推測される結果を得ました。しかしこの結果は研究デザイン等に問題点があるため効果があるとは言い切れず、「示唆的である」としか言えないという実情でした。

 

【まとめ】

両調査をまとめると、大豆イソフラボンの摂取は抗うつ効果(うつの症状を軽減する効果)があると言えそうですが、研究方法おいて不明な点や再検討が必要であると言える点があり、効果があるとは言い切れないと言えます。臨床試験からは、抗うつ効果を得られるであろう大豆イソフラボンの量は、「食事から十分に摂ることができそうである」ということが分かりました。

 

【あとがき~小寺より~】

日本や中国では大豆や大豆製品を日常的に食べる食文化があることから、「大豆や大豆製品摂取状況」の調査が実施されていました。大豆製品を食べる食文化の無い欧米では「イソフラボン類」を「サプリメントで投与」した臨床研究が中心でした。

わたしたち日本人が昔から「植物由来のたんぱく質源」として大切に食べてきた大豆や大豆製品に含まれる大豆イソフラボンには「ホットフラッシュ(ほてり)」や「骨粗しょう症」などの軽減効果もあることが示唆されていることから(※2・※4)

閉経後の女性が 健やかに過ごすために「助けとなる食べ物」 と言う事ができるのではないでしょうか。しかしながら、1つの食品を多量に食べることは食事バランスを欠く要因となりえる他、思わぬ健康障害を招く事にもなりますので「摂り過ぎ」には注意が必要です。

また、健康食品やサプリメントの中には、女性ホルモンのバランスが乱れて生理不順や不正出血など月経に関する健康危害が報告されたため、医師会でも注意喚起されている成分を含む商品もありますので十分注意しましょう。
(※3)

 

大豆イソフラボンは腸内細菌によって大豆イソフラボンに含まれる「ダイゼイン」が「エクオール」に変換されることでエストロゲンと似た働きをしてくれます。この腸内細菌は、アジア人では約50%、それ以外の人種では25%の人にしかないという事や、日本人では「年代によっても差がある(20歳代の方が少ない)」「体調によっても変化する」ということが分かっており、大豆イソフラボンは「摂った量」だけでなく「腸内環境」によっても効果が左右されると言えます。(※4)

大豆イソフラボンが効果的にエクオールに変化できるように、腸内環境を整えて「大豆イソフラボンと 自分が マッチする食生活」を続けていきたいなと思いました。

【出典】

Mark Messina , Carey Gleason.
Evaluation of the potential antidepressant effects of soybean isoflavones.
Menopause. 2016 Dec;23(12):1348-1360.

※1
国立がん研究センターがん情報サービス「資料集 用語集」https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/epidemiology.html
(参照2018-10-14)

※2
Taku K1, Melby MK, et al.
Extracted or synthesized soybean isoflavones reduce menopausal hot flash frequency and severity: systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
Menopause. 2012 Jul;19(7):776-90.

※3
日本医師会HP「国民のみなさまへ 注意喚起 File.1」
https://www.med.or.jp/people/knkshoku/pueraria/index.html
(参照2018-10-14)

※4
NPO法人女性の健康とメノポーズ「エクオールと女性の健康」
http://www.meno-sg.net/equol/index.html
(参照2018-10-14)

 

この記事の執筆:「食育革命®」代表 小寺美江
栄養士/食育コンサルタント

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